光回線って普通1Gbpsでしょ?
NURO光だけ2Gbpsって何かズルしてるんじゃないかしら?
別にズルしてる訳じゃないよw
ちゃんと技術的な裏付けがあって提供されているモノだよ。
多くの光回線が1Gbpsである中、NURO光は下り2Gbpsの最大速度を有しています。これはNURO光がG-PONという伝送方式で回線を構築しているためです。この記事では
- 他社の2倍の速度を叩き出すG-PONとは何か?
- フレッツ光等で利用されるGE-PONとの違いは何か?
- 一般的な光回線の仕組み
について解説します。他社が2Gbpsを簡単に真似できないのには理由があります。「NURO光だけ速いっておかしくない?」と思うかもしれませんが。この記事を通してNURO光の技術や2Gbpsの背景をより深く理解することができるでしょう。
「そもそもNURO光ってどんな感じの回線?」という方はこちらの記事をチェック!
G-PONとは?
G-PONとはGTCフレームを使った伝送方式
NURO光ではG-PON(ジーポン)という伝送方式を採用しています。G-PONはGTCフレームという特殊な固定長フレームを使ってデータを転送します。
従来の伝送方式は小さいデータを細切れで複数回送るため転送効率の低さが課題でした。G-PONではGTCフレームを使い複数のデータまとめて転送できるようになったので、転送効率が改善しました。
回線構成の種類
そもそもPONとはPassive Optical Networkの略で日本語では受動光ネットワークと言います。PONにより1本の光ファイバーを複数世帯で共有して利用することができます。共有とすることで一般家庭にも提供しやすい価格となりました。
また、PONを理解するためには他の回線の種類を知ることも重要です。
専有型
専有型はNTTの局舎等と直接一本の光ファイバーで接続する方法です。他の契約者のトラフィックが入り込むことがなく専有できるので非常に高品質な回線です。
一方、専用に回線を敷設するため費用が高くなります。一般家庭向けではなく企業の専用線としての利用がメインになります。
シングルスター方式
専有型、あるいは専用線と言った場合、下記のシングルスター方式を指します。
企業ではセキュリティの基準が厳しかったり、高い通信品質が要求される場合に専用線を使うことがあるよ。まぁそれも頻繁に、という訳では無いけどね。
共有型(シェアドアクセス方式)
専有型は費用が高く一般家庭には向きません。そのため一本の光ファイバーを共有し、費用を下げることで導入しやすくしました。これが共有型です(シェアドアクセス方式とも言われます)。
共有型の具体的な構成としてアクティブダブルスター方式とパッシブダブルスター方式があります。
アクティブダブルスター方式(AON)
局舎と家の間の多重化装置によって複数世帯へ分岐させる方式です。この時、
- 局舎~多重化装置 → 光
- 多重化装置~家 → 電気
で伝送されます。
別名AON(Active Optical Network)とも呼ばれます。“アクティブ”とは能動的に光⇔電気の変換をすることを指しています。後述のパッシブダブルスター方式(PON)はこの光⇔電気の変換が無く、アクティブダブルスター方式の一番の特徴になります。
アクティブダブルスター方式は最近の“光回線サービス”とは異なります。自宅には電気の状態で届くので新規で光回線の敷設はせず、既存のメタル線を流用できるメリットがあります。一方、多重化装置は設置場所や電源の確保等設備上のデメリットが多いです。現在は積極的に使われない方式なので、この記事でも以降は割愛します。
因みに、光⇔電気の変換をすると
・損失が発生する
・そもそも電気は光よりも遅い
という話もあってデメリットが目立つね。
パッシブダブルスター方式(PON)
アクティブダブルスター方式は多重化装置による“アクティブ”な変換によって通信する方式でした。一方、デメリットが目立つため多重化装置なしで各世帯へ分岐できる方式が望ましいです。
そこで、光⇔電気の変換なしで局舎から家まで一貫して光で伝送できるようにした方式がパッシブダブルスター方式です。パッシブダブルスター方式ではスプリッタという素子で光を分岐させます。スプリッタは電源も不要であり電柱に設置可能なので、設備面の都合が良いのです。
また、パッシブダブルスター方式が一般的にPON(Passive Optical Network)と呼ばれているもので、その名の通り光⇔電気の変換を行わない“パッシブ”な方式です。
パッシブダブルスター方式(PON)の特徴
光回線において良く使われる(安価に導入できる)
光回線ではパッシブダブルスター方式(PON)が良く使われます。家庭用光回線のように広いエリアへ普及させるには莫大な費用がかかります。パッシブダブルスター方式は光ファイバーを途中で分岐させる方式であり、局舎から契約者宅へ直接光ファイバーを敷設するよりも遥かに費用が圧縮されます。その分初期費用や毎月の利用料も安く済むので一般家庭向けとして広く利用されています。
また、前述の通り一部の企業向け回線ではシングルスター方式はありますが、求められる要件レベルが高い等一部のケースのみとなります。
最大32世帯で共有(遅くなる可能性有り)
パッシブダブルスター方式では最大32世帯に分岐されます。
- NTT局舎の屋内スプリッタで4分岐
- 各回線は電柱の屋外スプリッタでさらに8分岐(4×8=32)
- 8分岐の先にユーザーが居るかどうかはそのエリアの契約状況次第
多くの光回線の速度は最大1Gbpsを謳っていますが、これは“分岐する前”の速度です。もし32世帯契約していた場合、単純計算で1世帯あたり1Gbps/32=32Mbpsしか出ません。
あくまで【32世帯契約・全世帯同時利用・全世帯同等の通信量】という想定ですが、1Gbpsの広告に惹かれて契約しても実態は30Mbpsちょっとしか出ないことも理論上はあり得る、これがパッシブダブルスター方式の特徴です。
え!そんなに遅くなってしまうなんて。。。
これがベストエフォートと呼ばれる由縁だね。他の利用者の状況次第で速度が大きく変わるデメリットがあるけどその分安く提供できるんだ。
GE-PONとG-PON
※以降、パッシブダブルスター方式は“PON”の呼称で統一します。
PONの代表的な伝送方式がGE-PON(Gigabit Ethernet PON)とG-PON(Gigabit capable PON)です。それぞれいくつか違いがあります。
比較項目 | GE-PON | G-PON |
---|---|---|
最大速度 | 1.25Gbps (上り下り同じ) | 上り1.25Gbps 下り2.48Gbps |
標準化団体 | IEEE | ITU-T |
ベース技術 | イーサネット | GTCフレーム |
主な採用回線 | フレッツ光 | NURO光 |
G-PONの方が高速
GE-PONとG-PONの一番の違いは最大速度です。GE-PONが1.25Gbpsなのに対しG-PONは2.48Gbpsです。
フレッツ光等多くの光回線はGE-PONで構築されています。サービス仕様上、『最大1Gbps』となっているのはGE-PONの1.25Gbpsに由来します。
一方G-PONはGE-PONの約2倍の2.48Gbpsです。NURO光の『最大2Gbps』もこのG-PONの仕様に起因した速度となります。
なるほど!使っている伝送方式が違うから速度も違うのね!
規格を作った組織が違う(IEEEとITU-T)
速度だけを見るとG-PONがGE-PONの上位互換に見えますが、両者はそもそも標準化団体(規格を作った組織)が違います。
GE-PONはIEEEが制定
GE-PONはIEEE(アイトリプルイー、Institute of Electrical and Electronics Engineers、米国電気電子学会)が制定した伝送方式です。
IEEEはアメリカに本部を置く電気・情報工学分野の技術標準化機関です。一般的な分類としてIEEEはフォーラム標準と言われています。フォーラム標準では複数の企業が集まり先進分野の規格の検討・標準化を行っています。
G-PONはITU-Tが制定
一方、G-PONはITU-T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector、国際電気通信連合電気通信標準化部門)が制定した伝送方式です。
ITUは世界最古の国際連合の標準化団体であり、ITU-TはITUの電気通信標準化部門です。ITUはデジュール標準と言い、各国の代表が集まり標準化の検討を行います。例えば電波の周波数など法律に沿った取り決めや標準化を行っています。
標準化団体ってなんであるの?
なぜ標準化団体があるかと言うと、メーカー毎に独自規格を作ると、別メーカー同士の機器を接続できないためです。共通ルール化することで相互接続可能となり、技術的な発展やユーザーの利便性向上に貢献できます。
IEEEだとかITUだとか色々違いはありますがそもそもルールを考えた人が違うとだけ覚えておけばOKです。
規格の違いって、例えば他のスマホはUSB Type-CなのにiPhoneだけLightningだから同じケーブルを使えない…のと同じような話だね。
ベースの技術の違い
GE-PONとG-PONは両方ともPONではありますが、データの送り方が違います。
GE-PONはそのまま送る
GE-PONではEthernetフレームのまま回線に流します。EthernetとはPCやスマホが送受信する時のパケットの形です。特殊な処理を必要とせずシンプルな点がメリットです。通信機器も安価で普及させやすく、現在の光回線の多くはGE-PONで構築されています。
※ちなみに、上図の機器は
- ONU(Optical Network Unit):自宅側の光回線終端装置
- OLT(Optical Line Terminal):局舎側の光回線終端装置
であり、回線との橋渡しをする機器です。
G-PONはGTCフレームで送る
一方、G-PONはここに1手間加わります。
まず、EthernetフレームをGEMフレームという枠で括ります。データ単品で送る訳ではなく複数データを束ねるイメージです。また、G-PONはEthernet以外にもATM(Asynchronous Transfer Mode)という種類のプロトコルにも対応しています。
GEMフレームとATMセルを送信しますが、ここで出てくるのがGTCフレームです。GEMフレームとATMセルをGTCフレームという枠でさらに1つに括って一気に送信します。
GTCフレームは125μsの固定長フレームになります(バイト数での指定ではない)。125μsというのは電話等の既存サービスの基本時間単位と同じ周期であり,既存サービスもあわせて効率よく収容する観点で設計されています。
※因みに、バイト数換算すると1GTCフレーム≒38KBです。1つのEthernetフレームは1.5KBなのでたくさん収容できることが分かります。
- G-PONはEthernetにもATMにも対応している
- 複数のEthernetフレームをGEMフレームで括る
- GEMフレームとATMセルを更にGTCフレームで括って送信する
- GTCフレームは125μsで固定
- 効率的に転送して下り2.48Gbpsを実現
因みに、G-PONの前身でB-PONという伝送方式があるよ。B-PONはATMセルだけで送ってたけど、小さいサイズで何回も送る必要があるから効率が悪かったんだ。B-PONはBフレッツで使われてたね。B繋がり( ゚д゚)
NURO光はなぜG-PONを導入できたのか
現在の主流はあくまでもGE-PON
まず、時系列的に言えばGE-PONとG-PONの標準化は同じ時期(2004年)です。
引用:NTT FTTH方式に関する標準化動向
一方で現在の日本の光回線では圧倒的にGE-PONが多いです。理由は、
全国規模でのシェアを誇るNTT東西がGE-PONを採用しているため
↓
なぜGE-PONを採用しているのか?
↓
導入費用が安いため
↓
なぜ安いのか?
↓
仕組みがシンプルであり機器が安いため
という構図です。つまり最大速度よりも費用面を重視してGE-PONを採用したとも言えます。
※実際には複数の要因で決定しますが、あくまで1つの判断材料という意味で。
さらに現在はフレッツ光のサービスを流用する光コラボも台頭しています。光コラボはフレッツ光の設備を利用します。直接フレッツ光(NTT東西)と契約せずとも間接的にフレッツ光の回線を使っているケースも多いので必然的にGE-PONの利用率も高くなる訳です。
ドコモ光やソフトバンク光は通信キャリアだから回線も自社で全て準備している…と思ったら中身はフレッツ光の回線を使っていたのね。
NURO光がG-PONを導入できた理由
このように日本の回線事業社の本丸であるNTT東西がGE-PONを採用している中、NURO光はそれに反してG-PONを採用することができました。これは日本国内全体で見ても数少ない例ですが、理由としては下記が挙げられます。
- 後発組でありゼロから企画・検討できた
- ダークファイバーでサービス提供している
- ソニーグループの資本基盤があった
- So-netでのプロバイダー運営経験があった
後発組でありゼロから企画・検討できた
GE-PONの標準化及びNTT東西によるフレッツ系サービスの開始は2004年頃でした。一方、NURO光のサービス開始は2013年です。もちろん検討はもっと前から開始していましたが、いずれにしてもGE-PON、G-PONの情報や世の中のトレンド情報が出揃った状態で検討することができました。
大容量なコンテンツが増えている状況や将来性も総合的に加味し、G-PONが採用されました。
当時のインタビューを見ると、「インフラが整ったことがクリエイターに伝われば、リッチコンテツ作成の刺激になる」と需要に応えるだけでなく、むしろ需要を作って行きたいという気合が垣間見えて、中々おもしろいよ!
ダークファイバーでサービス提供している
NURO光は光コラボのようにフレッツ光の設備を借りている訳ではなく、設備投資してサービス提供しています。正確に言うと、ダークファイバー(利用していない余った光ファイバー)をNTT東西から借用し、通信設備を自社で投資しています。
もし光コラボであれば自由に決められる範囲が狭く、多くはフレッツ光の仕様に従う必要があります。
上記の通りNURO光は自社設備なので伝送方式から自由に決めることが可能です。もちろん設備投資にリスクはありますが、その代わり制約もなくなりG-PON採用に繋がった訳ですね。
ソニーグループの資本基盤があった
『設備投資』と簡単に書きましたが、実際は簡単ではないです。回線を提供するエリアの分だけ通信設備は必要になるので莫大な費用がかかります。もちろん機器を置くだけで終わりではなく、その後の運用費用もかかります。
普通の会社であればそこまでの設備投資に踏み切れず、フレッツ光の設備を借りる光コラボに流れます。
※光コラボであれば自社で設備投資するよりも遥かに低い費用で参入できます。
しかし、そこは世界のソニー。莫大な設備投資を判断しサービス開始にこぎつけました。少なくとも、ぽっと出の企業でできる話ではなく、資本力があってこそのやり方と言えます。
単純にお金をたくさん持ってるってだけじゃなく、投資への判断力もすごいわね。規模感が全然想像が付かない!
So-netでのプロバイダー運営経験があった
お金と物があっても事業は成功しません。一番の要素は人です。特にG-PONは世界ではそれなりに利用されていますが日本では製品や導入実績が少ないです。技術的な面での不安がありましたが、提供元のソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社(当時はソネット株式会社)は以前からプロバイダーサービスのSo-netを運営してきました。
So-netは1996年1月から運営されています。15年以上に渡る運営で蓄積されたインターネット回線のナレッジや優秀な技術者の活躍もあり、G-PONを用いた光回線のサービスインに至りました。
NURO光ではG-PON対応ONUを標準提供
ONU+ルーター一体型で2Gbpsをフル活用
NURO光では追加料金なしでG-PON対応ONU(ルーター一体型)を提供しています。このONUはメーカーと共同開発したモデルです。というのも従来の光回線ではONUとルーターが別筐体となる構成が良くありますが、NURO光において筐体の分離はデメリットになります。
ONUとルーター分かれている場合、せっかくONUまでは2Gbpsで来ていても、ONU⇔ルーター間は1Gbpsなのでボトルネックになってしまいます。
例えばPCをつなぐ場合、有線LANポートは最大1Gbpsです。もし2台のPCを繋いだ場合、ONU⇔ルーター間のボトルネックのせいで最大速度を出せません。(“合計1Gbps”なのでそれぞれが1Gbps出すことはできない。)
せっかくの回線スペック(2Gbps)を活かしきれない残念構成ね。。。
一方、ONUとルーターが一体型であればボトルネックは起きません。ルーターまで2Gbpsで来ているので2台のPCが1Gbpsずつ通信したとしても収まります。
「1筐体にまとまって見栄えが良いね」というだけの話ではなく上記の通り通信速度に影響を及ぼす話です。ユーザーが不利益を被らないようにNURO光のサービス仕様としてONU兼ルーターを標準提供しています。
もちろん、『ONU兼ルーターまで2Gbps』というのは理論値の話だからそこは注意だよ。速度そのものが保証されている訳ではないんだ。
その他の機能も入ったオールインワン構成
その他のポイントとしてNURO光のONUは、
- ONU
- ルーター
- アクセスポイント
- ハブ
4つの機能を持っています。
光回線のサービスによってはルーターがオプションだったり、アクセスポイントは別途自分で準備だったりで面倒なパターンがありますが、NURO光の場合は標準提供であり追加料金・追加手続きも不要です。
別々の機器で構成すると
- 電源口数がたくさん必要になる
- スペースをたくさん取って邪魔になる
- 配線が汚くなる
といったデメリットがあるのでオールインワン構成のメリットは想像よりも大きいです。
機器の異常が発生した時に切り分けする機器が絞られるっていうメリットもあるね。
G-PONの先は?光回線の未来を考える
GE-PON・G-PONの上位方式はたくさんある
現在の光回線では1Gbps(2Gbps)が主流ですが、高画質動画やゲームなどリッチコンテンツの増加に伴いトラフィック量も急激に増えています。
引用:総務省 令和3年版情報通信白書
また、今後もメタバース等のデータ量が多いコンテンツが普及すればトラフィック量はさらに増えていくことでしょう。
そうした背景から、一部家庭ではさらに高速な光回線の需要もあります。例えば、
- NTT東日本 → フレッツ光クロス
- NURO → NURO光10G
といった10Gbpsクラスのサービスも提供されています。これらは既存のPONでは対応できないため10G-EPON、XGS-PONといった上位の伝送方式で提供されています。
伝送方式 | 標準化団体 | 速度 | 主な採用サービス |
---|---|---|---|
GE-PON | IEEE | 下り1.25Gbps 上り1.25Gbps | フレッツ光 |
G-PON | ITU-T | 下り2.5Gbps 上り1.25Gbps | NURO光2ギガ |
10G-EPON | IEEE | 下り10Gbps 上り10Gbps | フレッツ光クロス |
XG-PON | ITU-T | 下り10Gbps 上り2.5Gbps | |
XGS-PON | ITU-T | 下り10Gbps 上り10Gbps | NURO光10ギガ |
NG-PON2 | ITU-T | 下り40Gbps 上り40Gbps | |
100G-EPON | IEEE | 下り100Gbps 上り100Gbps | |
NG-PON2+ | ITU-T | 下り100Gbps 上り25Gbps |
また、更に上を見れば100Gbpsを想定した方式も存在します。通信事業者が一般家庭向けにサービス提供するかどうかはさておき、新しい方式は日々検討されています。
当面は最大でも10Gbpsあれば問題ない
実際はどの程度の速度が必要なのか、結論としては多くても10Gbpsあれば問題ありません。
例えばPCの有線ポートで考えるとほとんどの端末は1Gbpsです。1台のPCにとって1Gbps以上の回線は無駄になりますが、複数端末を同時に接続することも珍しくないので1Gbps以上の回線の需要も一定数はあります。
一方、スマホやタブレットも含めた無線LANにおいて、例えばWi-Fi6(IEEE 802.11ax)では理論上最大9.6Gbpsというとんでもないスピードになります。
※あくまで理論値であり、速度を出すには色々と条件があるので実際にはそこまで出ませんが。
ただ、1Gbpsを超える能力は十分にあるので無線の観点でも1Gbps以上の回線の需要はあります。
一方、現在10Gbpsで通信可能な端末はごく一部です。回線と端末の条件が揃ってはじめて高速通信が可能です。回線だけ速くても端末がショボいと活かしきれません。
今後の端末の性能向上を想定しても、回線速度は普通に使う分には現在の1Gbps~数Gbps、MAX(ヘビーユーザー)でもせいぜい10Gbpsあれば十分と思われます。流石に数年後に一般家庭向けの100Gbps回線の需要が上がるとは考えにくいですし、技術的・費用的な課題もあります。
もちろん人によっては通信量が少なくて、1Gbpsすらいらないって人もいるしね。重要なのは自分の使い方と契約内容が合ってるかどうかだね。
速度以外にも大切な指標はある
光回線は最大速度に注目が集まりがちですが、応答速度(ping値)や安定性を重視している人も多いです。例えばオンラインゲームでは0.1秒単位の反応の差で勝敗が決まることもあります。最大速度だけでなく、
- レスポンスがすぐに返ってくるか
- 安定して一定の通信速度を保てるか
という点も重視されるようになってきました。
PONは複数ユーザーで回線を共有する仕組みである以上、速度や安定性は担保されません(ベストエフォート)。本当に保証して欲しいなら専用線を引くのが確実ですが、一般家庭では現実的ではありません。
一方で、特定通信を優先的に転送するような光回線サービスも存在します。
引用:コミュファ光
このサービス例ではQoS(Quality of Service)という技術を使って優先制御をしています。通常、データは通信機器に着信した順に処理・転送されます。QoSでは予めデータに“印”を付けておき、印の付いたデータを先に処理することで優先制御をしています。
これは『PONとは全く別の技術で実装されている』という点がポイントです。PONの技術自体は今後も発展するでしょうが、上記のように利用者の要望に応えようとするとPONだけでは技術的にカバーできないのも事実です。
※もちろん、作られた目的や想定が違うので当たり前ではありますが。
現在は、
- フレッツ光(GE-PON) → 1Gbps
- NURO光(G-PON) → 2Gbps
という『分かりやすい違い』があるのでPONの違いがそのまま魅力や訴求力につながっています。しかし、時代が進めばいずれ分かりやすい違いもなくなって行くでしょう。例えば10Gbpsクラスであれば
- フレッツ光クロス(10G-EPON) → 10Gbps
- NURO光10G(XGS-PON) → 10Gbps
であり、カタログスペックに違いはありません。(技術的な細かい話は抜きにして)一般人から見ればフレッツ光クロスもNURO光10Gも同じ10Gbpsの光回線です。つまり最大速度だけに注目すればどこかで頭打ちになりPONによる違いはなくなると考えられます。
「では何を基準に光回線を選べば良いか?」と言うと+αの内容です。それは
- 料金かもしれないし
- 回線の安定性かもしれないし
- キャッシュバックの多さかもしれないし
- スマホ回線とのセット割りかもしれないし
- 全く別の何かかもしれません
『どの通信事業者が採用しているPONでも最大速度は大差無いから他のポイントで差を付ける』、最終的にPONはそれくらいの立ち位置になる技術かもしれないですね。
技術的な背景にせよ、回線のサービス仕様にせよ、料金にせよ、利用者が正しく理解して自分に合うサービスを選択できることが重要であることに変わりはありません。
最大速度を重視するのか、それ意外のポイントで見るのか、もしくは両立できるのか、利用者側も試される時代がやってくるのね(゚A゚;)ゴクリ
まぁもちろん今日明日の話じゃないし、そんな大げさに考える必要は全然ないよ。
まとめ
- G-PONとはGTCフレームを使った伝送方式
- 回線は専有型と共有型がある
- 専有型はシングルスター方式
- 共有型アクティブダブルスター方式とパッシブダブルスター方式
- パッシブダブルスター方式がPON
- PONは安価だが最大32分岐するので遅くなる可能性あり
- フレッツ光で採用されたのがGE-PON(1.25Gbps)
- NURO光で採用されたのがG-PON(2.48Gbps)
- GE-PONはデータをそのまま転送
- G-PONはデータをGEMフレームに入れ、さらにATMセルとGEMフレームをGTCフレームに入れて転送
- NURO光がG-PONを導入できた理由
- 後発組でありゼロから企画・検討できた
- ダークファイバーでサービス提供している
- ソニーグループの資本基盤があった
- So-netでのプロバイダー運営経験があった
- G-PON対応ONU兼ルーターを標準提供で2Gbpsフル活用
- ONU・ルーター・アクセスポイント・ハブの機能も全部コミコミ
- 10G, 100GbpsのPONもあるが、多くても10Gbpsあれば十分
- 速度以外にも安定性を重視する需要もある
- PONによる通信速度の進化に加え+αの付加価値も重要になる
この記事ではNURO光の“2Gbps”を支える根幹技術であるG-PONを中心にPONや回線の構成について説明しました。技術寄りの話なので難しい内容もあったと思います。実際、契約前に技術的なことを調べようと思う人は極わずかだと思いますが、ここで重要なのは『物事には理由がある』ということです。フレッツ光が1Gbpsである理由、NURO光が2Gbpsである理由、回線の速度が遅くなる理由…etc。何事も理由を知っていると正しく判断できます。この記事で伝えている内容は「NURO光は他社と違う伝送方式&自社設備なので最大速度も速いよ」ということです。でも何も知らないとNURO光の広告は怪しいと感じて終わりです。もちろんNURO光にも良い面と悪い面はありますが、まずは知識を得る・正しく理解するところから始めてもらい、この記事がその一助になれば幸いです。