NURO光を提供しているソニーネットワークコミュニケーションズって業績はどうなの?あんまり悪いとNURO光のサービスが続かないとかあるんじゃない?
そうだね。サービス内容も大切だけど、そのサービスを提供する企業の業績も重要だね。今日はソニーネットワークコミュニケーションズの業績をチェックしてみよう。
NURO光はソニーネットワークコミュニケーションズという会社によって運営されています。インターネット回線のサービス提供には通信設備の設置・運用に莫大なコストがかかるため、あまりにも業績が悪いと今後のサービス提供ができなくなります。NTTクラスになればすぐにサービス終了という事はまずありませんが、NURO光くらいの規模のサービスではどうなのでしょうか?
そこでこの記事では下記2つの資料から業績を見てみます。
- 損益計算書(PL)
- 貸借対照表(BS)
直近の業績は良いのか悪いか、今後の業績の展望はありそうなのか等々、この記事がNURO光を使い続けて大丈夫かどうかの(財務的な意味での)判断材料になれば幸いです。
ソニーネットワークコミュニケーションズ
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社(以下、SNC)はソニーの100%小会社で主にNURO光やSo-net等のネットワーク周りに注力している会社です。(旧社名:ソネット株式会社)
MURO光のサービスは2013年から開始していますが、So-netはその前から提供しており会社としては20年近い歴史があります。
■会社概要
項目 | 内容 |
---|---|
社名 | ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 Sony Network Communications Inc. |
設立 | 1995年11月1日 |
本社 | 〒108-0075 東京都港区港南1-7-1 |
社長 | 渡辺 潤 |
株主 | ソニー株式会社 100% |
事業内容 | 通信事業 IoT事業 AI事業 ソリューションサービス事業 |
損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)
この記事ではSNCの決算情報として、損益計算書(Profit and Loss statement、PL)と貸借対照表(Balance Sheet、BS)を確認します。細かい話は抜きにしてざっくり言うと、
- 損益計算書(PL)=1年間の売上や利益のまとめ
- 貸借対照表(BS)=資産をどれだけ持っているかのまとめ
です。この2つを見ることで企業の財務状況が分かるという訳です。実際に公開されている資料はこちらですが情報量が多いのでこの記事では重要なポイントに絞って解説します。
企業規模や上場可否によって、公開する情報量は全然違うね。SNCは上場してないけどPL、BSは公開してるって感じだね。
2023年3月期の損益計算書(PL)
下記は2023年3月期(2022年4月~2023年3月分)の損益計算書(PL)の結果となります。
※主要な項目のみ抜粋
- 売上高:約1,493億円
- 売上総利益:約443億円
- 営業利益:約129億円
- 経常利益:約123億円
- 当期純利益:約87億円
それぞれの用語の簡単な説明です。
■売上高
売上金額の合計です。
■売上総利益
例えば30円で仕入れた物を100円で売れば、売上は100円、差額の70円が利益になります。この70円のことを売上総利益(または粗利)と言います。
■営業利益
上記で利益が70円と言いましたが実際にはオフィスの家賃や光熱費、通信費、宣伝広告費等の費用がかかります。これらの費用を売上総利益から差し引いた残りを営業利益と言います。営業利益はその企業の本業での利益であり、いかに営業利益を確保できるかが重要なポイントです。
■経常利益
企業には本業以外の支出・収入もあります。例えば株の売買や土地・建物の売買等です。それらの収支も加えた結果が経常利益です。
■当期純利益
最後に法人税等を支払った後に残った金額が当期純利益であり、手元に残る金額になります。
特に、重要なのは売上高と営業利益です。売上高は全体の規模感や成長しているかどうか、営業利益は本業の活動において利益を残せているかを判断する重要な指標です。
ぐぬぬぬ~難しい言葉が出てきた(;_;)
とりあえずは売上高と営業利益を見ておけばOKだよ。
売上高は横ばい
SNCの決算は事業セグメント別の業績が公開されていません。例えば
- 通信事業の売上が◯◯万円
- IoT事業の利益が◯◯万円
と言った内訳がありません。全体の金額からの推測でしかない点は予めご了承ください。
昨年だけの結果を見ても良く分からないのでホームページ上で公開されている直近5年分のデータを比較してみましょう。
ここ3年の売上高は1,489億円→1,468億円→1,493億円と、1,500億円弱で横ばいになっています。内訳として、NURO光の売上高があまり伸びてないのか、NURO光は伸びているが他の事業が足を引っ張っているかは不明です。
一方、ソニーグループ全体の光回線事業としては好調で、毎年順調に契約数を伸ばしています(下記はNURO光以外の回線も含む)。こういった報道を見る限りはNURO光自体は好調と予想されます。
引用:PR TIMES
光回線は一回契約してしまえば年単位で売上が見込めるっていうのも大きいわね!
営業利益は徐々に伸びてる
一方、営業利益は75億円→107億円→129億円とここ数年で徐々に伸びています。ここは予想外で今年の営業利益は多少落ち込む事も予想されていました。理由は2022年のNURO光パケロス騒動です。対応としてNURO光は2022年から『ネットワーク設備の増強』を進めています。
設備の増強とあるため利益を押し下げるような設備投資も予想されていましたが、蓋を開けてみればそんな事はなく前年度と比較しても20億円以上成長しています。
しかし、これも詳細が語られていないので内訳は不明で、
- 大した金額の設備投資ではなかった
- 実は来年以降に計上される(来年は利益が下がる)
- 営業利益は既に下がっており設備増強対策がなければもっと良い業績だった
などなど詳細は不明です。このあたりはあまり情報公開されないためモヤモヤする点でもあります。
少なくても営業利益だけで見れば前年比20%成長であり、かなり良いで数字です。今後もこの水準を維持できるのか、はたまた来年以降は息切れするのか注目ポイントにはなるでしょう。
利益を上げるにはコストカットしたり効率的に業務を回す必用があるね!
2023年3月時点 貸借対照表(BS)
次の指標は貸借対照表(BS)です。BSとは一言でいうと資産の一覧表です。例えば、
- Aさん:貯金1億円、借金10億円
- Bさん:貯金1千万、借金500万円
どちらの方が経済的に良いですか?という話です。一見Aさんの方が貯金は多いですが、借金はその10倍あります。Bさんは貯金が少ないですが借金は貯金の半分なので有事の際のリスクは少ないですね。
※企業としては借金が多くても投資できる金額が多い方がより事業的には良いという見方もできる。
そのためBSを見ればプラスの資産(現金、物件、証券等の資産)が多いのか、マイナスの資産(借金等の負債)が多いのかが分かります。実際のBSは内訳が細かいので結果だけ出します。
- 資産の部
- 流動資産:約630億円
- 固定資産:約872億円
- 資産合計:約1,502億円
- 負債の部
- 流動負債:約387億円
- 固定負債:約526億円
- 負債合計:約913億円
- 純資産の部
- 純資産:約589億円
固定資産とは例えば建物や設備のことで、流動資産はそれ以外の現金等を指します。例えばNURO光やSo-netで言えば通信設備は自前で所有しており固定資産になります。
要は、お金になるモノを1,500億円持ってるけど、借金的なモノも900億円持ってる事よね?
私には想像できない金額ね(・_・;)
純資産は横ばい
2023年3月時点での純資産は+589億円ほどとなります。
ただ、これだけを見ても良く分からないので直近の推移も見てみましょう。
直近3年間は539億円→585億円→589億円となっており、純資産ほぼ横ばいです。正確には資産は増えていますが 、その分負債も増えています。もちろん資産だけが増えてけば理想的ですがそう簡単なものではありません。むしろ投資した分だけ回収して結果トントンに落ち着いているとも言えるでしょう。
少なくても、
- 「資産を食い潰して会社を何とか継続している」
- 「右肩下がりでヤバイ」
といった状況でないことは見て取れます。(内部的に何か爆弾を抱えている等あれば別ですが)公開業績を見るにすぐにNURO光のサービスが危ういといった事にはならないでしょう。
横ばいかぁって思うかもしれないけど、会社を継続するだけでも凄い大変だからねぇ~
今後のNURO光の予想
では今後のNURO光はどうか?と言う話ですが、まず光回線市場全体で見ると年間の純増数はざっくり100万回線程度です。この100万回線のパイを各通信事業者で奪い合う構図です。
引用:PR TIMES
2022年のパケロス事件があり一時期は信用を落としていましたが、その後はネットワークの増強を繰り返しだいぶ改善してきました。また、外部調査の結果を見ると高い満足度を誇り、少なくても数年レベルはある程度の収益を見込めるでしょう。
一方、いくつか不利な要素もあります。
- 各家庭に行き渡った感はある(今どき光回線自体は当たり前)
- 宅勤務による固定回線特需はとっくに終了
- 安い回線サービスも増えてきた
- モバイルとのセット割等大手通信キャリが強い
特に1.2.からも、今後の契約数はじわじわ伸びても収益的にはそこまで爆増しないと予想されます。また3.からも光回線市場全体が割引き方向に向かえば企業の売上としては当然下がります。
契約数が伸びない、同じ内容なら他社より安くしないと利用者が逃げる、ということなら高単価の新サービスを提供するしかないね・・・ってことで10Gbps回線にも注力してるんだろうな~きっと。
また、SNCの商材は光回線だけでなく、モバイル・IoT・AI等もあります。NURO光と比較すれば一般消費者には目立たない存在ですが法人向けサービスもあります。どこかに注力してより伸ばしていくのか、全体的にそこそこで攻めるのか、いずれにしても「来年はなんとか1500億円を突破したい」なんて事は関係者であれば誰でも思う売上高になっています。
また、SNCは第4の固定通信キャリアを目指し活動を進めています。現状、通信キャリア3社の売上は文字通り桁違いであり、数年では追いつけないでしょうが、10年20年後ここに並ぶ未来は来るのでしょうか?
引用:SNC
参考までに下記は通信キャリア3社の売上高です。
- NTT:121,564億円
- ソフトバンクグループ:62,215億円
- KDDI:54,467億円
会社が大きくなればサービスが良くなったり、利用者に還元サれるかもしれないから、SNCには頑張って欲しいわね!
NURO光は超高速の光回線
NURO光は他社ではほとんど採用されていないG-PONという仕組みを使った高速回線です。そのため、一般的な光回線は大抵1Gbpsなのに対し、NURO光は2倍の2Gbpsの速度を誇ります。
追加料金は不要で、いわゆる『普通のプラン』で2Gbpsであり速度的にも料金的にも大きなアドバンテージがあります。
また、通常の2Gbpsプランに+500円するだけで10Gbpsプランに変更可能です。一般ユーザーにとってもヘビーユーザーにとっても魅力的な光回線であり、
- 高画質な動画視聴
- オンラインゲーム
- 在宅勤務(大容量ファイルの送受信)
等々あらゆるシーンで快適な通信速度を提供します。
新規契約を検討中の人も今の回線に不満がある人もNURO光は候補の1つになる回線です。もちろん良い面も悪い面もあり十分理解した上で検討しましょう。詳しくは下記の記事をチェックです。
まとめ
- 売上高は1,500億円弱
- ここ数年横ばい
- NURO光事業は好調と思われる
- 営業利益は129億円
- 純資産は589億円
- ここ数年資産と負債は両方増えていて結果純資産は横ばい
- 特別ヤバイ感じではない
- 今後もある程度はNURO光の回線契約は望める
- が、提供単価を上げないと売上アップには繋がりにくい
- そのために10G回線も注力か
- モバイル・IoT・AI等の事業分野も合わせて来年は売上高1,500億円超えを目指したい
- 第4の固定通信キャリアを目指し邁進中
この記事ではSNCの業績に注目し、NURO光の未来についても考えてみました。
一般的な上場企業と比べると公開されている情報が少なく、憶測の域を出ない内容も多いですが、ざっくりの全体像は見えて来ました。見た限り業績がヤバイのでNURO光がサ終・・・みたいなことは今のところなさそうです。
企業の売上が良いと、「利用者から巻き上げてるな!」と憤慨する人も居るかもしれませんが、良い面もあります。収益的な余裕があれば設備や人員への投資に回せますし、有事の際も対応しやすくなります。もちろん自分が支払う料金は安いに越したことはないですが、それで業績が悪くなってしまっては元も子もありません(このバランスが取るのが経営上難しいのですが(^_^;))
今年だけ業績が良くても意味がなく、SNCには長期的な安定・成長はもちろん、NURO光をはじめとした各種サービスの品質向上にも期待したいところです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。